法人化すべき本当のラインは? その④

その①その③
法人化を意識し始める〝理論上〟最も低い課税所得は200万円超としました。
令和7年度法改正も織り込んで試算した数値です。

ただし
・ 扶養親族・専従者のいない単身の個人事業主が
・ 自分以外に役員・従業員のいない「ひとり社長」で法人化したい
が前提なので、それ以外の要素が加わるとラインは変動します(上がります)

今回はおまけとして
法人化にあたり、課税所得のライン以外で関係する要素を挙げてみました。

ビジネスの展望上、法人で事業をやりたい

課税所得のラインに関係なく法人化
もしくは、最初から法人でスタートする人もいます。

理由としては
・法人でないと代理店契約などができない
・上場企業と取引することが最初から決まっている
・個人で請けきれない規模の仕事を取りたい(フリーランス仲間に外注したい)
・投資家から出資を受けてビジネスを成長させたい

といった事例を見てきましたし、全くアリです。

ちなみに、国や地方公共団体の公共事業は
資格要件を満たせば個人事業主でも応札・受注できるので
法人化は必須ではないです。

最初の2年間は消費税が無税になる‥?

個人事業主も法人も
2年前(2期前)の売上高が1,000万円を超えていれば
その年度は消費税の納税義務ありです。

法人設立1年目は「2年前」がない訳ですから
法人化して最初2年間は、原則として消費税がない。

これを利用して、売上高1,000万円を超えた(超えそうになった)タイミングで法人化し
消費税を先送りにするという事例がよくありました。

ところが、インボイス制度によってそれが一変。

適格請求書(インボイス)発行事業者として登録すると
たとえ設立初年度でも、2年前の売上高が1,000万円以下でも
いきなり消費税の納税義務が生じるようになった。

私も税理士法人で修業時代は、定番の提案にしていましたが
今や、法人化の初年度から消費税を納めるケースは
珍しいことでなくなりました。

法人化後、最終的には会社をどうしたい?

利益も出てきたし、準備を重ねて、晴れて法人設立。

でも、皆さん意外と考えていないのがエンディングです。

・自分の代で終わりにしたい
・家族(親族)に継がせたい
・第三者へ売却したい
・東証プライム上場したい さすがにこれは承ったことない(笑)

法人化を検討している方に、必ず尋ねるようにしています。

個人事業主をやめたければ、せいぜい「廃業届」を出せば済むけれど
法人は、解散・清算など幾つもの段階を踏まなければならず
気軽に店じまいできるものではありません

また、法人として利益を上げるのは素晴らしいことで
長年の利益の積み重ねが増えてゆくと、株価は当然に上がります。

これを第三者へ売却すれば、大きな利益を手中にすることができますが
家族へ継がせれば、株式を譲り受けた後継者は、巨額の贈与税で破産しかねません
そのため、親族へ承継させたければ「株価対策」などが必須になってきます。

法人の事業承継や売却について書き出すと
それだけで長編シリーズになるので、この辺で。

次回、もう一回だけ
法人化での色々な話を書いて締めたいと思います。